外国人を正社員として雇用する企業は年々増加しています。
その背景には大きく2つの理由があり、1つは労働人口の減少への対応、もう1つは優秀な人材を幅広く確保したいという企業戦略です。
特に近年では、後者の目的で外国人採用を積極的に進める先進的な企業が増えています。とはいえ、文化や言語が異なる外国人を正社員として迎えるには、人材探しから社内体制の整備まで、簡単には進まない場面も多いでしょう。
この記事では、外国人を正社員として雇用する際に押さえておきたい基礎知識をご紹介します。

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外国人が正社員として雇用される理由
日本には外国人を雇用している事業所が約34万カ所あり、外国人労働者は令和6年時点で約230万人に達しました。
厚生労働省が公表した「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」によると、届出が義務化された平成19年以降、過去最多を更新し続けています。

画像:厚生労働省が公表した「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和6年10月末時点)」より
在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が届出義務化以降、初めて最も多くなり約71万人、
次いで「身分に基づく在留資格」が約63万人、「技能実習」が約47万人、「資格外活動」が約40万人と、いずれの在留資格も増加傾向にあります。
深刻な労働人口不足
外国人の雇用が増加している背景の一つには、深刻な人手不足があります。
特に中小・小規模事業者において、この問題は深刻であり、彼らが専門的・技術的な外国人労働力の受け入れをさらに進める必要性を訴える声も強まっています。
日本の生産年齢人口(15~64歳)は引き続き減少傾向にあります。総務省の人口推計によると、2023年時点で15~64歳人口は約7,395万人と前年から減少しました。
これは少子高齢化が進む中で、労働力の構造的なひっ迫が今後も継続する可能性を示しています。
国内外問わず、優秀な人材を採用したい
外国人正社員を採用する目的は、「人手不足の解消」だけではありません。
語学力や専門スキル、異文化理解力を備えた人材を受け入れることで、社内に新しい視点や刺激が生まれ、社員の成長や組織全体の活性化につながるという期待があります。
また、企業の中には“優秀な人材を採用した結果、たまたま外国人だった”というケースも少なくありません。
マイナビの「2024年卒 外国人留学生採用状況調査」でも、採用企業の約73%が「国籍を問わず優秀な人材を確保するため」と回答しており、多様な人材を積極的に求める姿勢がうかがえます。
さらに、海外進出を計画・推進している企業にとっては、現地とのコミュニケーションや市場理解を支える戦力としても大きな価値があります。
このように、外国人採用は多様性の向上だけでなく、企業の競争力を高める重要な戦略となっています。

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外国人を正社員として雇用する場合の注意点

このように、大きな魅力がある外国人の正社員雇用ですが、注意点や課題もいくつかあります。
社内の受け入れ体制の構築
まず、外国籍社員を受け入れる体制の整備が必要です。
たとえば、外国語を全く使用しない部署に、日本語が十分でない社員が入社した場合、言語の壁によって大きなコミュニケーションストレスが生じることがあります。
実際、「社内の公用語は英語」としている企業でさえ、社員がストレスを感じるケースがあります。
そのため、採用前に社内で外国語が話せる人材を増やす体制を整えるか、日本語能力の高い人材を採用することが重要です。
また、「暗黙のルール」で理不尽なことを我慢するよう促した結果、退職につながった例もあります。
このように、外国人社員を受け入れる際には、日本人だけで通用していた社風や慣習を見直す必要があります。
さらに、異文化理解を促す教育も欠かせません。形式的な文化講座でなくても、同僚同士のランチでお互いの文化を学ぶ機会を持つ、定期的に上司が面談を行うなど、日常的な気遣いが重要です。
雇用する外国人の日本語レベル
前述のとおり、外国人を正社員として採用する際、日本語能力は非常に重要です。
IT系のエンジニアやデザイナーなど、職種によっては日本語が十分でなくても業務が可能な場合があります。
しかし、マーケティング職や営業職、接客業、バックオフィス業務などでは、高い日本語能力が求められます。
日本語能力の目安としては、日本語能力試験(JLPT)が用いられます。ビジネスレベルで日本語を使えるのは主に N1・N2 で、外国人人材紹介サービス「Bridgers」に登録されている外国人の約80%がこのいずれかの資格を保有しています。
このように、採用時には日本語レベルをしっかり確認すること、あるいは高い日本語能力を持つ人材を豊富に抱える人材紹介会社を活用することが、採用失敗を避けるポイントです。
業務内容
業務内容によっては、外国人の就労が認められない場合があります。
専門的な技術やスキルを必要とする業務であれば、多くの場合、就労が認可されますが、単純労働では認可されない可能性があります。
また、本人が保有している就労ビザの内容と実際の業務内容に差異がある場合、不法就労とみなされることもあります。
不法就労が発覚すると、罰則を受けるだけでなく、入国管理局からの信用を失い、今後の外国人採用に支障が出るケースもあるため、慎重な確認が不可欠です。
募集したいポジションで外国人を採用できるか不明な点がある場合は、申請を委託する行政書士と密に相談することをおすすめします。
外国人を正社員雇用するまでのステップ

それではここからは、外国人労働者を正社員として雇用する際の手続きや具体的な流れについて、順を追ってご説明します。
STEP1:採用の目的と募集要項の作成
当たり前のことかもしれませんが、まずは 雇用の目的を明確にすることが重要です。
ただ漠然と「人件費が安い」といった理由だけで採用活動を行うと、思うような人材を確保できず、徒労に終わる可能性があります。
外国人労働者を雇用する理由を明確にしたうえで、対象となる人材の国籍や具体的な業務内容、求める能力、雇用期間、賃金、雇用予定人数など、募集要項をしっかりと定めていきましょう。
STEP2:求人広告を出す、人材紹介会社を活用する
募集要項が決まったら、いよいよ採用活動を開始しましょう。外国人を採用するには、いくつかの方法があります。
求人広告の活用
もっとも一般的な方法は、求人広告や求人サービスの活用です。新聞や雑誌に加え、外国語対応のポータルサイトからも募集を行うことができます。
また、LinkedInやIndeed、wantedlyなど海外でも展開している求人サービスを活用すれば、外国人求人情報を発信したり、直接スカウトを行ったりすることも可能です。
こうした取り組みによって、外国人採用に積極的な企業という印象を与え、これまでとは異なる日本人の応募がある場合もあります。
大学や専門学校からの紹介
専門学校や大学、大学院の中には、外国人留学生の就職支援を行っているところもあります。
そのため、就職課に直接連絡して求人を掲載したり、インターンの募集を行ったりするとよいでしょう。
公的機関の活用
ハローワークや外国人雇用サービスセンターなどの公的機関を通じて採用する方法もあります。
厚生労働省が提供している「外国人雇用サービスセンター一覧」を活用して、採用活動を進めてみましょう。
人材紹介会社の活用
最後に、人材紹介会社の活用も有効です。外国人労働者の増加に伴い、外国人向けの人材紹介サービスも増えています。
例えば、Bridgersでは、大卒以上で日本語ビジネスレベルの候補者を対象に、1社単独の面接会を実施しています。
また、パソナグループは外国人留学生向け就職イベント「JOB博」を毎年開催しており、こうしたイベントに参加することで、直接求職者と面談し、お互いの理解を深めることが可能です。
STEP3:社内の受け入れ体制を整える
STEP1、STEP2 の順序が前後する場合もありますが、外国人を正社員として雇用する際には、同時に 社内の受け入れ体制 を整えることが重要です。
体制整備は、制度として明文化するだけでなく、日本人社員向けの異文化研修などを通じて、社内文化自体を変えていくことも大切です。
特に体制面では、書類上の不備などで双方に不利益が生じないよう、社内手続きのマニュアル化や担当者の教育 が必要です。
また、外国人雇用に関する管理上の疑問や職場での生活面の問題については、ハローワークの「外国人雇用管理アドバイザー」制度を無料で活用することができます。
STEP4:在留資格の確認
雇用対象者が日本国内にいる場合は、まず 在留資格 の確認を行いましょう。
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な滞在資格 のことです。
厚生労働省の「我が国で就労する外国人のカテゴリー」では、主な在留資格と、それぞれが就ける業務内容を確認できます。
ビザ取得のサポートを行政書士や弁護士が行っている場合もありますが、人材紹介会社を通している場合は、ノウハウを持つ会社に相談するのも一つの方法です。
転職者の場合は、前職でどのような業務をしていたか の確認も重要です。
前職の業務が自社の募集ポジションと類似していれば、在留資格の発行は比較的スムーズに行える可能性があります。
業務内容が異なる場合は、成績証明書などを提出してもらい、業務に適しているかを確認しましょう。
在留資格は、たとえ転職時に期限が残っていても、転職するとリセットされます。そのため、就労資格証明書 の提出が必要です。
提出を怠ると、資格更新の際に申請手続きを最初からやり直さなければならなくなります。
万が一、不許可となると、本人を退職させざるを得ない場合もあるため、十分に注意してください。
STEP5:面接
在留資格によって自社の業務に従事できると確認できても、自社と求職者のマッチングがうまくいかなければ、早期退職などのネガティブな結果につながる点は、外国人も日本人も変わりません。
面接では、意欲や適性をしっかりと確認することが重要です。
面接では、たとえば日本で働く意欲に関する質問が有効です。
「なぜ日本で働こうと思ったのですか?」といったオーソドックスな質問はもちろん、「この会社以外にどのような会社の面接を受けていますか?」といった質問もおすすめです。
これにより、他国でも仕事を探しているのか、日本国内だけで仕事を探しているのか、またどのような仕事に就きたいのかを把握できます。
同様に、「なぜ自社を受けたのか」「自社でどのような仕事をしたいか」といった質問をすることで、どの程度の気持ちで面接に臨んでいるのかを推し量ることができます。
また、日本での生活や業務に関して不安や懸念 があるかを確認するのも有効です。
日本での楽しいことばかりを想像している場合、その外国人が長く日本で生活するのは難しいかもしれません。不安要素を具体的に聞くことで、採用後のフォローにもつなげることができます。
日本国内での転職者であれば、前職で経験した嫌なことや困ったことを尋ねるのも有効です。
さらに、適性については履歴書や面接で確認するだけでなく、業務に関連する課題を実際に行ってもらうことで、より正確に判断することができます。
STEP6:雇用契約を結ぶ
外国人労働者を雇用する際は、労働条件について十分に話し合い、書面による雇用契約を結ぶことが重要です。
書面にすることで、認識のズレを防ぎ、万が一トラブルが発生した場合にも証拠として活用できます。
また、雇用契約書や労働条件通知書の書面での交付は、労働基準法で義務付けられています。
そのため、契約書を作成せずにトラブルが起きた場合、責任を問われるのは企業となる点に注意が必要です。
STEP7:外国人労働者の雇用管理とフォロー
外国人を正社員として雇用する際、最も気を配るべきなのは採用後と言われています。
異国から日本に来た外国人労働者は、社内の体制が整っていたとしても、地域社会が必ずしも外国人に優しいとは限りません。日常生活の中で、ちょっとしたストレスや孤独を感じることもあるでしょう。
そのため、少なくとも会社の中では、労働者が安心して働けるよう、適切な雇用管理やフォローが求められます。
外国人労働者が能力を最大限に発揮し、長く働いてもらえるよう、社内一丸となって多様な人材を受け入れる体制を整えることが重要です。
まとめ
今後、日本の労働人口はますます減少していくことが見込まれます。そのため、国内にとどまらず、海外からも優秀な人材を雇用すること がますます重要になります。
政府も外国人労働力の活用に積極的ですが、日本人の雇用確保を心配する声もあります。
一方で、外国人の多様な価値観やアイデアが社内に取り入れられることで、新たな発想や社内の活性化 につながるというポジティブな可能性もあります。
企業の成長のためには、優秀な外国人を正社員として採用することが大切です。採用の際には、メリット・デメリットや課題への対策を十分に検討し、最適な人材を迎える準備 を整えましょう。
