インバウンド消費とは日本に旅行に訪れる外国人観光客による日本国内での消費活動のことをいいます。
消費額の合計は年々増加傾向にある一方で日本国内では人口減少や国内消費の減少などの課題がみられます。
インバウンド消費の動向をしっかり押さえつつ、日本国内の企業や行政団体は、外国人観光客の受け入れによる経済効果に力を入れていく必要があります。
現在のインバウンド消費の動き
2018年に日本に訪れた外国人の消費額は、4兆5,189億円で過去最高額を記録しました。2012年以降この数字は年々増加傾向にあります。なかでも中国人旅行客による消費額が最大でしたが、中国や韓国など東アジアからの観光客による消費比率は全体として減少しています。
しかし、全体の消費額は増加していることから、東アジア以外の国の消費額は高まっていることがわかります。
画像の出典元:観光庁2018年(平成30年)の訪日外国人旅行消費額
一人あたりの一般客の旅行支出は153,029円で、買物代が34.7%を占めており、次いで宿泊費29.3%、飲食費21.7%という内訳になっています。
しかし、昨年に比べて買い物代は減少しており、主な原因は中国人旅行客による「爆買い」が減少傾向にあることが挙げられます。一方で宿泊費や飲食費は増加傾向にあり、今後も成長が期待されます。
(参照:観光庁)
インバウンド消費の「モノ消費」と「コト消費」
このインバウンド消費を詳しく知っていく上で、この「モノ消費」と「コト消費」という言葉は欠かせません。近年これらの言葉をメディアでもよくみかけるようになりました。
これらの二つのキーワードをもとにインバウンド消費についてより詳しくみていきましょう。
変化がみられる「モノ消費」
「モノ消費」とは、目に見える製品(モノ)に価値を見出す消費傾向のことをあらわしています。例えば日本のお土産物などを買う行動も「モノ消費」の1つです。
しかし、買い物をする傾向が強い中国やタイ、インドネシアの旅行者はオンラインショッピングの普及や、既に日本に旅行をした際に購入済みなどの理由によって購入する物に変化がみられます。以前は時計やカメラなどの高級品を購入する傾向にあったところから、生活用品や食品を購入する流れにシフトする傾向がみられます。
「コト消費」に外国人観光客は流れつつある
「コト消費」とは、商品やサービス、またそれらをデザインする時間の中で得られる体験(コト)を重視した消費傾向のことをあらわしています。例えば、街歩きや花見を体験するなどといった消費行動が挙げられます。
主に日本の文化や歴史を理解できる体験が好まれていて、歴史的建造物を訪れたり、自分の国にはない自然を楽しんだり、旅館や温泉入浴の体験が外国人観光客の消費として定着しています。
2018年度の外国人観光客による消費額の「娯楽等サービス費」に関しては昨年に比べ18.7%も増加しており「モノ消費」から「コト消費」へという外国人観光客の消費の流れの変化がみられます。着物をきて京都など日本の風情が感じられる街を歩く外国人観光客が多くみられるなど、このような消費のスタイルが浸透しつつあると言えるでしょう。
インバウンド消費を拡大していくためには?
以上、インバウンド消費の定義についてみていきましたが、このインバウンド消費自体にはまだまだ拡大の余地があります。日本のインバウンドに対して働きかけている企業は今後どのような点に着目して、伸びしろを定めていけばいいのかを「モノ消費」と「コト消費」の側面からみていきましょう。
モノ消費の拡大
外国人観光客のモノ消費は東京などの都市が活発ですが、地方においても需要が高まりつつあり、今後も拡大の余地があるといえます。モノ消費の際の購入品目としては特に米やお菓子など飲食料品の購入が目立ちます。
地方におけるモノ消費では、その土地の特産物に焦点をおいてしまいがちですが、全国で販売されてる商品を地方でついでに購入するというケースが多くみられます。弁当やおにぎり、お茶などは特に観光をしながら消費されるものとして購入されているので、そういったものを置いておくことで経済効果も見込めます。
また、日本の化粧品や医薬品などドラックストアにて購入するものも人気が高いため、そういったものを置いておくのもいいでしょう。一方で地元の特産物や伝統工芸品などはコト消費と紐付いて購入に至る場合が多くあります。
例えば、地元の人々の交流の中でおすすめされたり、実際に体験して触れた結果、時刻に持ち帰りたくなるといったケースがあります。よって地元産の商品は特に体験とセットであることが重要です。
コト消費の拡大
モノ消費からコト消費への移り変わりがみられる中、コト消費を拡大していくことはインバウンド消費の鍵となります。また、コト消費はモノ消費とは違って、体験に時間を使います。十分にコト消費のための受け入れ側の体制が整っていないと不満につながることがあります。受け入れる側の外国人観光客を理解する姿勢は大きなポイントとなるでしょう。
コト消費の代表的な歴史的建造物を訪れたり、自分の国にはない自然を楽しんだりといった体験はまだまだ大きな消費には繋がっていないのが現状です。こういった体験に日本の文化や生活の理解を深めるためのツアーガイドのニーズは高まっていますが、ニーズに対してサービスが十分に整っていません。こういったギャップを埋めていくことでコト消費の拡大の余地はまだまだあると考えられます。
また、旅館や温泉体験など地方での体験のニーズが高まる一方で、地方での外国人観光客への受け入れマインドが不足しています。抵抗感を持っていることや言語の壁が厚いなどの課題がまだまだ深く根ざしています。このような課題を他の民間企業や行政と連携していくことで解消していき、外国人観光客の満足度を高めていくことでリピーターや口コミが広がるなど、コト消費の活性化が期待できます。
さらに、来日前から情報発信をすることで事前に認知を高めておくこともコト消費拡大のための大きなポイントです。海外現地の旅行博に出店してPR活動をおこなうのも一つの方法です。また一方で、宿泊施設や観光案内所でチラシ等で情報掲示することでPR機会を設ける取り組みも効果的です。
(参照:訪日ラボ)
インバウンド消費が日本に与える影響
ではインバウンド消費が増えることで、日本にはどのような影響があるのでしょうか?
外国人観光客が増加することによって様々な経済効果があります。地方への観光客も増え、交通機関の需要や地元産業の活性化します。
特に地方においては地方ならではのテーマパークに旅館や温泉、特産物を食べたりと外国人観光客の求める体験の多くが集まっていて、需要の高まる「コト消費」で外国人観光客の地方誘致が可能だといえるのではないでしょうか。
外国人観光客の地方誘致は人口減少などの例えば、地方にて人口減少により補助金を受けなくては運営が厳しいバス路線がある中、外国人観光客の増加によって需要が補われるということも起きています。
また、この経済効果は観光を取り巻く宿泊業や交通機関だけでなく、地元小売店やドラッグストアにおいての食料品やお土産の購入がみられます。「モノ消費」の動向について先述したように、近年は生活用品の消費も高まっていることから、よりローカルに根ざした小売店やドラッグストアで日本人が日常的に利用するものを購入したいという外国人観光客の消費行動がみてとれます。
それにより、地方の地元小売店や農産物の直売所への経済効果も発生している。さらにそれらがきっかけとなり、地元ブランドのお菓子や水産物が海外展開に成功したり、日本人への販売に影響を与えるなど間接的な効果がある例もみられます。
(参照:観光庁2018年(平成30年)の訪日外国人旅行消費額)
まとめ
いかがでしたでしょうか?これからの日本国内の経済活性の重要な鍵となるインバウンド消費。その消費そのものは年々増えながらも消費行動のスタイルは移り変わっていきます。日々の情報を得ながら私たち受け入れる側も変容していかなければなりません。
そしてまだまだ拡大のチャンスはあり、それらを伸ばしていくことは企業の成長のチャンスとなります。これらのチャンスをしっかり掴んみ日本に来たい外国人観光客、そして日本にとってwin-winなかたちをつくっていきましょう。
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