外国人を正社員として雇用する会社が増加しています。
理由は大きく分けて2つあり、一つは労働人口の減少への対応、もう一つは優秀な人材を広く確保しようという企業戦略です。
特に最近では、先進的な企業で後者の理由から外国人採用を推し進める企業が増加しています。
しかし、文化も言語も異なる外国人を正社員として採用することは、人材探しから社内体制の構築まで、一筋縄では行かないでしょう。
今回の記事では、外国人を正社員として雇用する際に必要な知識についてご紹介します。
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外国人が正社員として雇用される理由
日本には外国人を雇用している事業所が約19万5,000カ所あり、外国人労働者は平成29年時点で約1,279万人に達しました。
厚生労働省が公表した「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】」によると、平成20年の外国人労働者は約486万人だったため、実に9年で約2.6倍にも増加しています。
画像:厚生労働省が公表した「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】」より
国籍は、中国が37万2,263人、ベトナムが24万259人、フィリピンが14万6,798人、ブラジル が11万7,299人と、いずれの国の労働者も増加傾向にあります。
深刻な労働人口不足
外国人の雇用が増加している原因の一つは、深刻な人材不足です。特に、中小・小規模事業者が中心で、「専門的・技術的な外国人受け入れ制度のあり方を検討する必要がある」と、安倍晋三首相が経済財政諮問会議でも発言しているほどです。
内閣府が示した資料によると、日本の生産年齢人口(15~64歳)は他の先進国に比べて低く、2000年を100とした場合、15年の日本は89.8で1割減少の見込み。一方、アメリカは113.5、イギリスは108.8で、いずれも1割前後増加しています。
労働人口が減少している一方で、2017年12月の有効求人倍率は1.59倍と43年ぶりの高水準 を記録しました。なかでも介護などの分野は4倍以上にものぼります。
国内外問わず、優秀な人材を採用したい
単なる労働力としてではなく、国内外問わず優秀な人材を採用したいという狙いもあります。文化も言語も異なる外国人を採用することで、業務上でプラスになるだけではなく、他の社員が刺激を受けて会社の成長につながるという期待もできます。
また、能力や人物重視で選考を行なったところたまたま外国人だったケースもあるようです。
マイナビが実施した「2017年卒 企業 外国人留学生採用状況調査」によると、外国人留学生の入社後の活躍について、「予想以上に活躍している」が2.7%、「十分に活躍している」が41.8%と、優秀な戦力として期待通りの成果を挙げていることがわかります。
また、海外進出を計画・実施している企業の場合、現地との関わりをサポートしてくれる人材としても期待できるでしょう。
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外国人を正社員として雇用する場合の注意点
このように、大きな魅力がある外国人の正社員雇用ですが、注意点や課題もいくつかあります。
社内の受け入れ体制の構築
まず、外国人の受け入れ体制の構築です。例えば、外国語が一切話せない部署に、日本語がおぼつかない人が入社した場合、言語面で大きなコミュニケーションストレスが発生します。会社の方針として「英語を話す」としている会社でさえ、ストレスを感じるようです。
採用前に、社内で外国語が話せる人を増やす体制を整えるか、日本語レベルの高い人材を採用する必要があります。
「暗黙のルール」で理不尽なことを飲み込むよう促した結果、退職に繋がったケースも。このように、外国人社員を受け入れるということは、日本人だけで通用していた社風を変革する必要もあります。
また、異文化教育面での理解促進も重要です。文化講座といった形式的なものではなくとも、同僚同士でランチに行ってお互いの文化について学ぶ、定期的に上司が面談を行うといった気遣いも大切です。
雇用する外国人の日本語レベル
前述したように、外国人を正社員雇用する際に日本語のレベルは非常に重要です。IT系のエンジニア、デザイナーなど職種によっては、日本語がおぼつかなくても何とかなる場合がありますが、マーケティング職や営業職、接客業、バックオフィス業務の場合、高い日本語レベルが求められます。
日本語能力を測る目安は、日本語能力検定です。ビジネスレベルで日本語が話せるのはN1・N2であり、例えばネオキャリアが運営する外国人人材紹介サービスBridgersに登録された外国人の80%以上がN2・N1の資格を持っています。
このように、採用時に日本語レベルを細かく確認したり、そもそも高い日本語力を持つ人材を抱えている人材紹介会社を選んだりすると失敗が少ないでしょう。
業務内容
業務内容によっては、外国人の就労が認められない場合があります。
専門技術や専門スキルなどを必要とする業務であれば多くの場合認可されますが、単純労働の場合は認可されない可能性もあります。また、本人が保有している就労ビザの内容と実際の業務内容に乖離がある場合、不法就労となることもあります。不法就労となってしまうと罰せられることはもちろん、入局管理局の信用を失い、その後の外国人採用ができなくなるケースもありますので、慎重な調査と確認が必要です。
募集したいポジションで外国人採用ができるのか、少しでもわからないことがある場合は、申請を委託する行政書士と密な打ち合わせをおすすめします。
外国人を正社員雇用するまでのステップ
それでは、ここからは実際に外国人労働者の正社員雇用のための手続きや流れについて具体的にご説明していきます。
STEP1:採用の目的と募集要項の作成
当たり前のことかもしれませんが、まず雇用の目的を明確にしましょう。ただ漠然と、「人件費が安い」などの理由で採用活動を行った場合、思うような人材を雇用することができず、徒労に終わる可能性もあります。
外国人労働者を雇用する理由を明確にした上で、対象となる人材の国籍や具体的な業務内容、求める能力、雇用期間、賃金、雇用予定人数など、募集要項を定めていきましょう。
STEP2:求人広告を出す、人材紹介会社を活用する
募集要項が決まったら、早速募集をかけましょう。外国人の採用には、いくつかの方法があります。
求人広告の活用
もっともメジャーな方法は、求人広告や求人サービスの活用です。新聞・雑誌のほか、外国語のポータルサイトなどからも募集を行うことができます。
また、LinkedInやIndeed、wantedlyなど海外展開している求人サービスを活用することで、採用に関する情報や求人を発信したり、直接スカウトを行ったりすることも可能です。外国人採用に積極的な企業という点に好感を持って、これまでとは違った日本人の応募もあるかもしれません。
大学や専門学校からの紹介
専門学校・大学・大学院のなかには、外国人留学生の就職をサポートしているところもあるため、就職課に直接コンタクトして求人を出したり、インターンの募集を行ったりしましょう。
公的機関の活用
ハローワークや外国人雇用サービスセンターなどの公的機関を通して採用をする方法もあります。厚生労働省が提供する「外国人雇用サービスセンター等一覧」を活用し、採用活動を行ってみましょう。
人材紹介会社の活用
最後は人材紹介会社の活用です。外国人労働者の急増を受け、人材紹介サービスも増加しています。例えば、ネオキャリアが運営するBridgersは、1社単独海外面接会を開催。大卒以上の日本語ネイティブレベルの候補者だけの1社単独海外面接会を実施しています。また、パソナグループは外国人留学生向け就職イベント「JOB博」を毎年開催しており、こういったイベントに参加することで、直接求職者と話ができ、お互いの理解を深めることができます。
STEP3:社内の受け入れ体制を整える
STEP1、STEP2と前後することもありますが、外国人の正社員雇用と同時に社内の受け入れ体制を整えましょう。体制の整備は、会社の制度として明文化することに併せ、日本人社員の異文化研修などで社内文化を変えていくことも大切です。
特に体制の面では、書類上の不備等でお互いの不利益にならないよう、社内でスムーズな手続きができるためのマニュアル化や担当者の教育が必要です。なお、外国人雇用に関して管理的な問題や職場生活の問題に不明点があれば、ハローワークにて「外国人雇用管理アドバイザー」の制度を無料で利用することができます。
STEP4:在留資格の確認
雇用対象者が日本国内にいる場合は、まず在留資格の確認を行いましょう。在留資格とは、外国人が日本に在留するために必要な「滞在資格」です。
厚生労働省の「我が国で就労する外国人のカテゴリー」では、主な在留資格のカテゴリーを確認することができます。在留資格は、その資格ごとに就ける仕事が決まっています。
ビザ取得のために行政書士や弁護士がサービスを提供している場合もありますが、もし人材紹介会社を通している場合は、ノウハウを持つ会社に聞いてみるのも一つの方法でしょう。
なお、転職者の場合は「前職でどのような業務をしていたのか」の確認も必要です。
前職の業務が自社の人材募集ポジションと類似している場合は、在留資格をスムーズに発行できる可能性が高まります。業務内容が異なる場合は、本人の成績証明書などを提出してもらい、業務内容に適しているのかを確認しましょう。
在留資格は、たとえ転職時に期限が残っていたとしても、転職するとリセットされますので、「就労資格証明書」の提出が必要になります。提出を怠ると資格更新の際にすべての申請業務を再度ゼロから行わなくてはなりません。万が一不許可となってしまうと、本人を退職させなくてはならなくなってしまうケースもありますので、注意してください。
STEP5:面接
在留資格により自社の業務に従事してもらうことが可能だと確認できても、自社と求職者のマッチングが上手くいかなければ早期退職などのネガティブな結果につながることは、外国人も日本人も変わりません。面接にて意欲や適正をしっかり確認しましょう。
面接では、例えば日本で働く意欲についての質問を投げかけるのが有効です。
「なぜ日本で働こうと思ったのですか?」というオーソドックスな質問はもちろん、「この会社以外にどのような会社の面接を受けていますか?」のような質問もおすすめです。他国でも仕事を探しているのか、日本国内だけだとしてもどのような仕事に就きたいと思っているのかを確認できます。
同じように、なぜ自社を受けたのか、自社でどのような仕事がしたいかなどの質問をすることで、どのくらいの気持ちで面接を受けているのかを推し量れます。
日本での生活や業務内容について不安やネガティブに思っていることを聞くこともおすすめです。
日本での楽しいことばかりを想像しているなら、その外国人は長く日本で生活することが難しいかもしれません。また、この質問で具体的な不安要素などを聞くことができれば、採用後の具体的なフォローにつなげることもできます。
日本国内での転職者であれば、前職であった嫌なことを聞いてみることも有効です。
適正については、履歴書や面接の質問で確認する他に、業務に関係するなんらかの課題を実際に行ってもらうことでより正確に判断できるようになります。
STEP6:雇用契約を結ぶ
外国人労働者を雇用する場合は、労働条件についてよく話し合い、書面による雇用契約を結びましょう。書面にすることで認識のズレを防止し、万が一トラブルが起こった場合にも証明書として機能します。
雇用契約書や労働条件通知書等を書面で配布することは、労働基準法で義務化されています。このため、契約書を作成せず何かトラブルが起こった場合、責任を問われるのは企業です。
STEP7:外国人労働者の雇用管理とフォロー
外国人を正社員として雇用する場合、もっとも気遣いが必要なのは採用後と言われています。異国から日本に来た外国人労働者は、例え社内の体制が整っていたとしても、地域社会まで外国人に優しいとは限りません。日常でもちょっとしたストレスや孤独を感じるはずです。
このため、少なくとも会社では労働者が安心して働けるよう、しっかりとした雇用管理やフォローが必要です。
外国人労働者が能力を最大限に発揮し、長く働いてくれるよう社内一丸となって、多様な人材を受け入れる体制を作ることが重要です。
まとめ
これからますます日本の労働人口は減少し、国内だけに止まらず、海外からも優秀な人材を雇用することが重要になってきます。
政府も外国人労働力の取り入れに積極的なため、日本人の雇用確保について心配する声もあがっていますが、日本にはない価値観やアイデアが社内で育つというポジティブな可能性もあります。
企業の成長のためにも、優秀な外国人を正社員として雇用することが重要です。採用の際には、メリット・デメリット、課題への対策をしっかりと練った上で、最適な人材を採用しましょう。