はじめて外国人を採用される事業主の方の中には、「ビザ」という言葉を聞いたことはあっても、実際どういうものかは分からない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、外国人が日本で働く際に必要となる「就労ビザ」について、説明していきます。
1|ビザ(査証)と在留資格の違い
はじめに、よく混合される2つの言葉「ビザ(査証)」「在留資格」の違いについてご説明します。
1-1.ビザ(査証)とは
画像の出展元:在ベトナム日本大使館HP
「ビザ(査証)」とは、入国を希望する外国籍の方を審査して、事前に日本への「入国を許可」する許可書です。
審査は、入国を希望する外国籍の方が居住している国の日本大使館/領事館でおこなわれ、このビザ(査証)はパスポートに貼付されます。
一方で「在留資格」は、日本への「入国後の活動を許可し、具体的な活動範囲を定める」資格です。
在留資格の申請・取得方法は、申請人である外国籍の方が海外に居るか日本に居るかで異なります。
1-2.在留資格とは
画像の引用元:出入国管理庁
在留資格とは、外国籍の方が日本で合法的に活動をおこなうために必要な資格です。
在留資格は29種類(令和元年11月時点)あり、なかでも日本で働くことが許されているものは「就労ビザ」と呼ばれています。
就労ビザの申請をすると、入国する際に空港で「在留カード」が渡されます。
このカードには、日本への滞在目的(在留資格)が記載されているため、就職するときや、部屋を借りるとき、携帯を契約するときなどに使えます。
就労ビザが発給されると自動的に在留カードも持つことになります。
在留資格は1人1種類しか持つことができないので、自分の在留資格で許可されている範囲外の活動や就労は禁止されています。
この在留カードの偽造作成が近年問題になっていますが、正しい在留カードを保持していない外国人を採用した場合、企業も罰金を課せられることになりますので、注意してください。
1-3.就労可能な在留資格の種類
日本の在留資格の種類は、2019年4月に新設された在留資格「特定技能」をあわせると、29種類あります。
日本に在留する外国人は、必ずこの29種類の中のうち、いずれか1種類の資格に該当することになります。
先ほどご紹介した、日本で働くことを目的としたビザ(就労ビザ)は以下の19種類です。
公用(例:外国政府の職員やその家族など)
教授(例:大学教授、助教授、助手など)
芸術(例:作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、写真家など)
宗教(例:僧侶、司教、宣教師等の宗教家など)
報道(例:新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど)
経営・管理(例:会社社長、役員など)
法律・会計業務(例:日本の資格を有する弁護士、司法書士、公認会計士、税理士など)
医療(例:日本の資格を有する医師、歯科医師、薬剤師、看護師など)
研究(例:研究所等の研究員、調査員など)
教育(例:小・中・高校の教員など)
技術・人文知識・国際業務(例:理工系技術者、IT技術者、外国語教師、通訳、コピーライター、デザイナーなど)
企業内転勤(例:同一企業の日本支店(本店)に転勤する者など)
介護(例:介護福祉士の資格を有する介護士など)
興行(例:演奏家、俳優、歌手、ダンサー、スポーツ選手、モデルなど)
技能(例:外国料理の調理師、調教師、パイロット、スポーツ・トレーナー、ソムリエなど)
特定技能(特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能/熟練した技能を要する産業に従事するもの)
技能実習(例:海外の子会社等から受け入れる技能実習生、監理団体を通じて受け入れる技能実習生)
高度専門職(現行の外国人受入れの範囲内にある者で、高度な資質・能力を有すると認められるもの)
1-4.就労ビザの有効期限
就業ビザの有効期限は、多くが5年、3年1年または3ヶ月となっています。高度専門職は無制限のものもあります。
有効期限は、パスポートおよび在留カード(日本に中長期館在留する外国人に交付されるカード)に記載されていますので、雇入れの際には必ずチェックするようにしましょう。
ビザの有効期限が近い外国籍の方を採用する際はビザの更新をしましょう。
前職と職種や就労目的が変わる場合は在留資格の切り替えが必要ですので、必ず切り替えをおこなってください。
1-5.アルバイトの在留資格
アルバイトであっても、就労ビザは必要です。
就労ビザを持たない外国人を雇い入れて働かせた場合、不法就労、および不法就労あっせんの罪に問われる可能性があります。
就労ビザ「技能」を持つ外国籍の方が調理師としてレストランでアルバイトするなど、在留資格(就労ビザ)で許されている範囲の仕事であれば、問題なくアルバイトとして働くことができます。
しかし、もっている就労ビザで許されている範囲外の仕事に従事させるのは禁止されています。
例えば、就労ビザ「経営管理」をもつ外国人を、コンビニのアルバイトとして雇用することは原則できません。
就労ビザで許可された仕事と異なるアルバイトをする場合は、「資格外活動」の許可を別途もらう必要があります。
「資格外活動」は、外国籍の方が住む場所を管轄する入管に申請することで取得できます。
就労が認められていない留学生も、この「資格外活動」の許可を得れば、週28時間までアルバイトをすることができます。
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2|採用前の注意点
採用予定者が国外にいる場合は、在留資格の中から職務内容に該当する在留資格の取得申請をおこなう必要があります。
そのため、採用する前に募集する職種がどの在留資格に該当するのか事前に確認しておくと、申請および採用がスムーズになるでしょう。
採用予定者が国内にいる場合は、すでに保持している在留資格と業務内容が一致している人材を採用する、もしくは在留資格の変更許可申請が必要になります。
※アルバイトは前述の通り、「資格外活動」の許可を得れば、在留資格と業務内容が異なっていても採用することができます。
2-1.就労ビザの申請方法を確認
就労ビザの仕組みや内容がわかったら、次は就労ビザの申請方法を確認しましょう。
国外にいる外国人を採用する場合は、これから申請することになるので、申請から受理されるまでに期間なども知っておく必要があるでしょう。
就労ビザの申請から受理まで
ステップ1:
採用予定の外国人の勤務(予定)地を管轄する入国管理局に、「在留資格認定証明書」の交付申請をおこない、許可を得ます。
「在留資格認定証明書」とは、「採用予定である外国人は日本での就労資格を取得するのに最適な人材であって、雇用主となる事業所も就労資格を得るための資格を満たしている」ことを証明するためのものです。
※すでに日本にいる外国人留学生を雇用する場合は在留資格を「留学」から「技術」などの就労ビザへの変更手続き申請をします。
ステップ2:
ステップ1で交付された「在留資格認定証明書」を、採用予定の外国人に送付します。
その他必要な書類を持って、外国人本人が自国の日本大使館もしくは総領事館に就労ビザの申請をします。
ステップ3:
就労ビザが発給されたら、まず、ステップ1の「在留資格認定証明書」が交付されるのに、2週間~3ヶ月かかります。
この期間は事業所の規模によって異なります。就労ビザの発給は当日から数日かかるケースまで、各国の大使館によって多少開きがあります。
なお、「在留資格認定証明書」の有効期限は発行日の日付から3ヶ月以内です。
この期限内に来日しない場合、証明書の効力が失われまたステップ1からやり直しすることになりますので、注意が必要です。
採用予定の外国人がいつ頃来日できるのか、事前に確認をとっておきましょう。
2-2.就労ビザがとりやすい業界
就労ビザは、その外国人の専門性が高ければ高いほど、許可がおりやすいとされています。
例えば、該当の外国人が大学や過去の職場で習得した専門性の高い知識を活かす仕事に就く予定の場合は、就労ビザは許可されやすい傾向にあります。
業界でいえば、語学力がいかせる貿易業や外国語学校などの教育業、通訳などは外国人が多く求められる業種であるため、就労ビザもとりやすくなるとされています。
申請に必要な書類に関しては、「はじめての外国人今日入社手続き・必要書類【完全マニュアル】」にて、詳しく説明していますので、このページを参照してください。
3|就労ビザの申請
就労ビザを申請しても、必ず在留資格がもらえる訳ではありません。
それぞれの在留資格に、学歴や実務経験年数などの許可条件があり、申請書類とあわせて適切な証明書類の提出が必要です。
3-1.就労ビザの取得が不許可になる場合
就労ビザを申請しても「不交付・不許可」という残念な結果が出てしまうことがあります。
ビザの発給が許可されなかった場合、「不許可通知書」が届きます。
残念ながら、抗議などをしてもこの決定がくつがえされることはありえません。
しかし一度許可がおりなくても、再申請することが可能です。
「不許可通知書」には、なぜ不許可になったか詳細には記されていませんので、理由が知りたい場合は、申請した入国管理局に訪問し、審査官に話を伺う必要があります。
なお、不許可になることが多いケースは以下の通りです。
- 申請書類の不備
- 申請した「在留資格」と雇用予定の外国人の経歴がマッチしなかった。
- 申請した外国人の経歴に問題があるとされた
- 雇用主である会社の経営が不安定
- 提出した書類の信憑性が疑われた
3-2.再申請の方法
不許可になった場合は、なぜ不許可になったのか理由を分析したうえ解消して再申請することになります。
ただ再申請の場合、不許可の記録が出入国管理庁に残るため、初回の申請よりも審査が厳しくなります。
再申請の場合は、「転用届」というものを提出すると、最初の申請から3ヶ月以内であれば、提出資料はそのまま使用することができます。
一から書類を準備するのは非常に時間と手間がかかるので、この「転用届」を活用するといいでしょう。
その際は必ず、不許可になった原因の箇所は修正して、そのほかの部分を転用するようにしましょう。
【3分資料】はじめての外国人採用のポイント
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4|行政書士に依頼するメリットとデメリット
就労ビザの手続きは煩雑で、多くの手間と時間を要します。
専門家である行政書士の力をかりて、代理で申請をおこなってもらうのも1つの方法です。
行政書士の方にお願いすれば、提出書類の作成、適切な証明書類の収集、書類の提出・再申請を代理でおこなってもらえます。
行政書士は、いわば在留許可申請のプロフェッショナルです。
外国人雇用関係の相談はもちろん、永住・帰化申請や補助金申請、法人関連手続き、中小企業支援などの相談にものってもらえます。
4-1.行政書士に依頼するメリット
行政書士は、書類作成および申請のプロフェッショナルですので、行政書士に依頼すれば、就労ビザ取得のためにかかる多大な労力が不要になります。
また、専門家に申請書類を作成しもらうと審査も通りやすくとされていますので、計画通り採用および事業をすすめることができます。
また、申請中のトラブルや、採用予定の外国人との対応もおまかせできます。
4-2.行政書士に依頼するデメリット
当然、これらのサービスには手数料がかかります。報酬料金は高額になることもあります。
「どんどん料金がかさんで言って、当初聞いていた金額と大きな差ができてしまった」なんてことがないよう、料金体系が明瞭な専門家を探す必要があります。
また信用の面では、入国管理局から「届出済み証明書」の発行を受けている事務所を探しましょう。
4-3.行政書士への報酬相場
事務所によって、料金体験はかわってきますがここではごく一般的な報酬料金を紹介します。
- 初回相談 1万円〜
- 相談(2回目以降) 1時間5,000円〜(タイムチャージ制を採用するところがほとんど)
- 在留資格認定証明書交付申請 100,000円〜200,000円
- 在留資格変更許可申請 100,000円〜
5|まとめ
今回は外国人を採用する際に、必ず必要になる「就労ビザ」の申請の仕組みについて簡単に説明しました。
外国人を海外から日本に呼ぶ際には、就労ビザ申請の手続きも煩雑になりますので、できるだけ早めに準備しておくことが大切になります。
行政書士に代行申請を依頼することも選択肢の一つに入れて、対策を怠らないようにしましょう。