近年、「建設業の若者離れは当たり前」という言葉を耳にすることが増えています。
国土交通省の調査によると、建設業就業者の約3割が55歳以上で、29歳以下はわずか1割程度にとどまっています。
高齢化と若者不足が同時に進行しており、国内の建設業界はかつてない人材危機に直面しています。

出展:国土交通省 建設業を巡る現状と課題
このまま「当たり前」の状態を放置すれば、将来のインフラ整備や災害復旧の担い手が不足し、日本社会全体の安全や発展にも影響が及ぶ可能性があります。
では、なぜ若者が建設業を避けるのか、そして企業はどのような手を打てばこの状況を変えられるのでしょうか。
若者が建設業を避ける4つの理由
労働環境の厳しさ
建設現場は、真夏の炎天下や真冬の寒さの中での作業、重い資材の運搬など、身体的負担が非常に大きい環境です。
こうした条件は、座って働くデスクワーク志向の若者にとって大きなハードルとなります。
さらに、高所作業や機械操作などの危険が伴う場面もあり、安全面への不安も若者離れの一因です。
長時間労働と休日の少なさ
週休1日制や不規則な勤務時間が続く現場では、ワークライフバランスを重視する若者に不人気です。
他業界では週休2日制やフレックスタイム、在宅勤務の導入が進んでおり、比較されることで建設業の厳しさが際立ってしまいます。
「3K」イメージの根強さ
建設業は長らく「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージが定着しています。
実際には、作業の効率化や安全対策の進展で改善されている現場も多いですが、SNSや口コミを通じて若者に伝わる情報が古いままの場合もあり、誤解が解けていません。
古い慣習と文化
上下関係が厳しく、「見て覚える」型の教育が根強い企業文化は、柔軟な働き方や主体的な学びを重視する若者にとってストレスになります。
また、IT化やデジタルツールの導入が遅れている現場も多く、スマートフォンやアプリに慣れた世代には不便に感じられることもあります。
企業が取り組むべき6つの対策

労働環境の改善
- 週休2日制の導入やシフト調整による休日確保
- 夏季の熱中症対策や冬季の防寒対策の徹底
- 快適な休憩所や更衣室の設置、空調設備の改善
こうした改善は、働きやすさを大きく向上させ、若手人材の定着につながります。
業務効率化とIT導入
- ドローンによる測量や3D設計の導入で作業時間を短縮
- 施工管理アプリやオンライン会議の活用でペーパーレス化
- AIやセンサー技術を活用した安全管理の強化
効率化により体力負担や長時間労働を軽減でき、若者に魅力的な現場を提供できます。
給与・待遇の見直し
- 同業他社との比較に基づく適正賃金の設定
- 資格取得支援、家賃補助、通勤手当など福利厚生の充実
- 成果やスキルに応じた昇給制度の透明化
給与面の改善は、建設業への就業を選ぶ大きな動機になります。
企業文化の改革
- 上下関係をフラットにし、意見を出しやすい職場環境の整備
- 若手社員向けのメンター制度やOJTの導入
- 社内コミュニケーションツールの活用で風通しの良さを演出
若者が安心して学び、成長できる環境を整えることが重要です。
魅力発信と広報活動
- SNSや動画を通じて、現場のリアルな魅力や社員の声を発信
- 高校や専門学校と連携し、建設業への早期アプローチを実施
- 若手社員が活躍する姿を可視化し、業界のポジティブなイメージを拡散
正しい情報発信は、若者の興味を引き、応募意欲につながります。
外国人材の積極採用と育成
- 国内若年層の減少を補うため、海外や在日外国人の採用を強化
- 「技能実習」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を活用
- 社内研修や生活サポートで定着率を向上
- 多様な文化・言語背景を持つ人材が、新しい発想や国際的視点を現場にもたらす
多様な人材を受け入れることで、現場の活性化と国際化が同時に進みます。
建設業の新しい魅力

安定性と需要の高さ
災害復旧や都市再開発、インフラ整備など、建設業の需要は途絶えることがありません。景気変動の影響を受けにくく、長期的な雇用の安定性が魅力です。
資格とスキルの習得
国家資格や専門技術を取得することで、キャリアの選択肢が広がります。スキルは国内外で通用し、長期的な市場価値を高める武器になります。
社会貢献の実感
自分が携わった建物や道路が地域に残り、人々の生活を支えることは大きなやりがいです。「目に見える成果」がある職業は、若者にとって達成感を感じやすい仕事でもあります。
グローバル化の波
外国人と協働する機会が増え、多様な文化と触れ合える職場環境が広がっています。国際的な視点や語学力を活かせる仕事としても注目されつつあります。
行動する企業が、若者離れを変えていく

「建設業の若者離れは当たり前」という言葉は、現状を諦めた業界の声とも言えます。
しかし、労働環境の改善、IT活用や業務効率化、外国人材の受け入れ、そして積極的な魅力発信によって、その“当たり前”は変えられます。
国内外の多様な人材が安心して働ける環境を整えることが、建設業の未来を守る第一歩です。
次の担い手を育て、業界を活性化させるのは、今、行動する企業だけなのです。
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