インバウンド需要とは?恩恵を受ける業界と人材獲得

訪日外国人の増加に伴い、インバウンド需要もここ数年で急増しています。

そもそもインバウンド需要とはどういったもので、どの業界が恩恵を受けるのでしょう。

また、インバウンド需要の恩恵を最大限に享受するためには人材の獲得が必須です。

インバウンド需要の基礎知識から人材獲得の方法までをご紹介します。

インバウンドとは

インバウンドという言葉は、英単語の(inbound)から生まれました。元々は「入ってくる」という意味の形容詞でしたが、訪日外国人観光客の急激な増加を背景に、近年では「外国人観光客が日本に訪れること」を指します。2015年には「ユーキャン新語・流行語大賞2015」にノミネートもされ、注目を集めています。

訪日外国人の急激な増加

日本を訪れる外国人は、1977年は約103万人と出国日本人数の3分の1以下でしたが、2013年には1000万人を突破、2017年には前年比19.3%増の約2,869万1,000人もの外国人が日本を訪れました。訪日外国人観光客は急速な勢いで増加しています。

参考:JNTO 日本政府観光局『訪日外客統計の集計・発表

JTB総合研究所が日本政府観光局 (JNTO) 発表統計から作成しているグラフ。

訪日外国人の急激な推移が見て取れる

(画像の出典:JTB総合研究所

外国人観光客が増加したことには、以下の要因があげられます。

  1. 日本政府が経済成長戦略として観光立国化を推進していること
  2. 日本での滞在や買い物が割安になっていること
  3. 格安航空路線の拡大

1に関しては、政府は2020年までに訪日外国人観光客数を4,000万人、2030年までに6,000万人まで増加させるという目標を掲げ、「ビザ手続きの緩和・弾力化」や「入国管理手続きの改善」などの施策を実施。今後もさらなる増加が期待できるでしょう。

参考:観光庁「観光庁アクションプラン

また、2に関しては円安の影響が大きいです。下記のチャートをご覧いただくと分かるように、2013年以降、為替が円安に転じています。円安がピークだった2015年には外国人観光客による「爆買い」が流行語大賞を受賞したほどです。

2011-2013年ごろは円高だったが、2013年以降、円安に転じている

画像の出典:Yahoo! JAPANファイナンス「ドル円チャート

LCC就航の拡大による試算

上記にてご紹介した外国人観光客増加の原因「3. 格安航空路線の拡大」について、内閣府は具体的な試算を行っています。

LCCは順調に就航便数を増やしており、2016年は28.2%、2017年には25.7%増加しています。これ以降、年20%のペースでLCCの就航便数が増加していくと試算すると、2020年には目標の4,000万人を超える約4,210万人に達する見込みです。なお、就航便数の増加を控えめに年10%ずつと仮定すると、約3,770万人に留まります。

参考:内閣府「第2章 第3節 今後のインバウンド需要拡大への展望

中国が最多、東アジアからの旅行者が7割

国別来日者数では、中国が最多で約735万5,000人、次いで韓国が約714万人、台湾が約456万人と東アジアからの旅行者が約74%を占めています。主要20市場全てで過去最高を記録し、中でも韓国と中国は全市場で初めて700万人台に達しました。

JTB総合研究所が日本政府観光局 (JNTO) 発表統計から作成しているグラフ。

(画像の出典:JTB総合研究所

このため、近年は訪日外国人客、特にアジアからの観光客をターゲットにしたビジネスが活発になっています。百貨店や量販店、飲食店などにおける通訳はもちろん、百貨店の免税カウンターの強化、量販店における外貨両替機の設置が進んでいます。また、宿泊施設の数が需要に追いつかず、宿泊施設の整備や民泊の法整備も進行中です。

東京オリンピックに向けた訪日外国人の増加

2020年に開催を控えている東京オリンピック・パラリンピックも、訪日外国人が増加している大きな原因のひとつです。世界的なスポーツの祭典に際し、訪日外国人の数は大きく増えることが見込まれています。

この好機を最大限に活用すべく、国は2016年に「明日の日本を支える観光ビジョン」を定め、観光先進国に向けてさまざまな改革を行っています。

例えば、文化財を観光資源として活用すべく分かりやすい多言語化を促進する、宿泊法制度を抜本的に見直して民泊サービスへの対応を進める、最新技術を用いた出入国管理、キャッシュレス環境の整備などが挙げられます。また、さまざまなスポーツイベントの積極的な開催や会議・研修などを目的としたMICEの誘致などにも力を入れています。

(出展:国土交通省

過去のオリンピック・パラリンピックを見てみると、オリンピック・パラリンピックをきっかけに訪日外国人数の増加が期待できると分かります。

2012年大会が開催されたイギリス、2008年の中国、2004年のギリシャ、2000年のオーストラリアでは、いずれも開催決定の前後で訪日外国人数が増加し、開催後も安定的に増加しています。

またイギリスにおいては、ロンドンオリンピック・パラリンピックをきっかけに関心が高まり、世界の主要50ヶ国が対象の「総合的な国家ブランド」ランキングで1ランクアップして4位を獲得しています。

(出展:国土交通省観光庁

インバウンド需要とは

このような外国人観光客からの需要をインバウンド需要といいます。インバウンド消費とも呼ばれ、先ほど説明した「インバウンド」と「需要」「消費」を組み合わせた造語です。

いまや国内消費を支える存在にまで成長しており、2015年の日経トレンディによる「2015年ヒット商品ベスト30」の3位にも選出されました。選出の理由には、わずか半年で1.6兆円が日本に流入したこと、中国人の観光客の“爆買い”のインパクトがあげられます。

インバウンド需要が注目される背景

前述したように、2003年に日本国政府は「観光立国」を掲げ、2020年までに訪日外国人観光客数を4,000万人、2030年までに6,000万人まで増加させるという目標を策定しています。

これに伴い、インバウンド需要も順調に増大しています。東日本大震災が発生した2011年には1兆円を割りこみましたが、2012年には1兆円台を回復、2017年には4兆円に到達し、6年間で実に約5.4倍もの消費の伸びを記録しました。

画像の出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査

インバウンド需要で恩恵を受ける産業は?

このように、今後もさらなる増加と発展が見込めるインバウンド需要。まずは、恩恵を受ける可能性が高い産業について見ていきましょう。

小売業界 百貨店、家電量販店、コンビニ、ディスカウントショップ、ドラッグストア、免税店など
飲食業界 飲食店、居酒屋など
宿泊業界 ホテル、旅館、カプセルホテル
観光業界 テーマパーク、動物園、ゲームセンターなど
交通業界 鉄道、バス、タクシー、航空など
メーカー 家電メーカー、化粧品メーカーなど
その他 民泊を運営する個人、楽天ペイなどの決済業界

 

観光客が増えることですぐに恩恵を受けそうな産業は、まずは宿泊業界かもしれません。実際に、急激な観光客の増加にホテルの供給数が追いつかず、民泊が大きな注目を集めました。また、移動手段として交通業界も、日本の多様な食にも注目が集まっており、恩恵を受ける一方で観光客を受け入れるための対策が急務と言われています。

外国人旅行者に人気の地域は、にぎわいを増すことで町や村自体の設備・サービスが充実するでしょう。このため、インバウンド需要は地域活性の起爆剤としても期待されており、積極的に取り組むことに大きな社会的意義もあるのです。

インバウンド需要に関しては、対応が進んでいる業界、遅れている業界など様々ですが、これに関連した企業は「インバウンド銘柄」と呼ばれ、投資家からも注目を集めています。

野村證券のインバウンド銘柄特集ページ

地方都市にもチャンスがある

インバウンド需要の中でも、近年はモノ消費よりもコト消費のほうに訪日外国人のニーズが傾いてきています。そのため、たくさんのモノがそろう主要都市に勝てなかった地方都市にもインバウンド需要の大きなチャンスがあります。

多言語対応を進める、フリーWi-Fiを整備するなどして訪日外国人を呼び込む工夫が可能ですが、現状はこういった整備がまだ整っていない地方都市も多く、ニーズに応えてしっかり整備すれば訪日外国人の大幅な増加も期待できます。

インバウンド需要はどの季節に多い?

インバウンド需要に備えるには、どの季節に外国人観光客が多いのかを把握する必要があります。そうすることで、適切な時期に適切なプロモーションを打つことが可能です。なお、以下のデータはあくまで全体の統計のため、業態ごとの特徴をかんがみる必要があります。

日本政府観光局の統計によると、2018年で訪日外国人数が多い月のトップ3は以下のとおりです。

1位:4月(約290万人)
2位:7月(約283万人)
3位:6月(約270万人)

4月が最も多いのは、桜を始めとした花見の需要が高いためだと思われます。Googleの検索でも、「cherry blossoms」の検索ボリュームは3月末から4月中旬にかけて増加します。また、日本政府観光局などは花見ツアーを組むなど桜を積極的にPRしています。中華圏の清明節や欧米圏のイースターなど、4月に長期休暇が多いことも4月の訪日外国人数が多い理由の一つだと思われます。

参考:JTB総合研究所「インバウンド 訪日外国人動向

インバウンド需要はどの地域に多い?

インバウンド需要を地域別に見てみると、現在は地域によって大きな偏りがあります。北海道・沖縄・京都などの有名観光地や、東京・大阪など利便性と観光資源の多さで有利な大都市に集中しており、インバウンド需要による地域活性化にはまだ結びついていない現状があります。

ただし、宿泊者数上位5都道府県を抜いた42県の外国人観光客は、前述のとおりモノ消費よりもコト消費を多く楽しんでいることが分かっています。また、地方を訪れた外国人観光客は再訪日意欲も高いとのことです。

地方に外国人観光客を呼び込むには、インターネットを使ったPRの改善や、自然体験の観光サービスの見直しが必要です。

今後、需要が高まる人材とは?

インバウンド需要の恩恵を最大限受けるためには、これに対応できる優秀な人材の確保が必須です。語学力はもちろん、異文化を受け入れ適応できるソフト面でのスキルも重要です。日本国内ではバイリンガル人材の需要がますます高まっているそう。そんななか、外国人労働者への注目も高まっています。

2018年10月、日経新聞は「外国人、もう代役じゃない 外食各社の成長の要へ 」でバイトの3人に1人が外国人労働者と報じました。

居酒屋大手で「テング酒場」「旬鮮酒場天狗」など120店舗を運営するテンアライドは現在、約2800人のアルバイトを雇っており、うち約900人が外国人です。2017年の外食市場は前年比0.8%増の25兆円と踊り場を迎えており、人手不足を外国人労働者がカバーしています。

日本経済新聞社が実施した外食企業へのアンケートでは、2018年度に外国人の正社員の割合を増やすと回答したのは224社中44社と約20%。2017年度17%からさらに増加し、2年前の8.7%の2倍の水準にまで増加しました。

また、海外展開でも外国人労働者への期待は高まっています。特に、海外展開を視野に入れている企業にとって、自社の店舗と現地の事情に精通した外国人労働者への期待は高いと言えるでしょう。

優秀な外国人労働者を採用するために

今回の記事では、インバウンド需要の基本から、恩恵を受ける可能性が高い業界、そしていま必要とされている人材についてご紹介してきました。特に今後は外国人労働者の適切な採用が企業の成長の要になるとも言われています。

インバウンド需要の恩恵を受けると言われている飲食・小売・宿泊……いずれも接客業です。日本人のような接客精神があり、なおかつ訪日客数の多い中国・韓国の言語が話せる人材に注目が集まりつつあります。しかし、このような人材を見つけるのは簡単なことではありません。

適切な人材を採用するために、Bridgersのような採用サービスを活用する方法もおすすめです。今後は少子化でさらに人材獲得競争は熾烈になると言われています。インバウンド需要の恩恵を最大限に活用するためにも、多方面からの人材獲得を検討してはいかがでしょう。

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