2020年の東京五輪の影響もあり、日本は外国から見て人気の観光地となっています。
旅行業界やサービス業界はもちろん、様々な職種で対策が必要と言われていますが、そんな中「インバウンド観光」というキーワードをよく聞くようになりました。
しかし、「インバウンド」とは一体どのようなこと言うのでしょうか?
今回は、その意味を詳しくお伝えするとともに、現状挙げられている課題や、各業界の取り組み事例についてまとめてみました。
日本の経済循環のひとつのキーとも言われる「インバウンド」…観光・サービス業に携わる方はもちろん、今後関わりが予想される業界の方も必見です。
インバウンドとは
まずは「インバウンド」という言葉の意味についてご説明します。
インバウンドの英語表記は「inbound」。「入ってくる、到着する 」という意の形容詞です。その「入ってくる」という意味から、「お客様からのお問い合わせ」という意味でも使われます。マーケティング業界ではWebサイトからの問い合わせとして、コールセンターではお客様からの電話としても使われています。
旅行業界においては「インバウンドツーリズム」、「インバウンド観光」といったように、他の言葉と組み合わせて使われており、「訪日外国人旅行」と同義と考えて良いでしょう。
インバウンド観光に関わる市場を「インバウンド市場」と呼ぶこともあれば、訪日外国人旅行市場、訪日外客市場、訪日外国人観光客市場、などと呼ぶこともあります。2013年に訪日外国人旅行者が1,000万人を突破したあたりから、インバウンドという単語の認知度も飛躍的にアップ。インバウンド、インバウンド市場、インバウンド消費といった単語もよく見かけるようになりました。
インバウンド観光のメリット・デメリット
なぜこんなにもインバウンド観光が注目を集めているのでしょう。そこには、インバウンド観光がもたらす大きなメリットが関係しています。
インバウンド観光のメリット
インバウンド観光の一番のメリットは経済効果です。インバウンドでの国内の消費は順調に伸び続けています。飲食・宿泊・レジャーをはじめ多くの業種でインバウンドによる経済効果が期待でき、近年では観光業だけでなく小売業、サービス業でも外国人向けのサービス開発や、メニューの多言語対応などをするところも増えています。
外国人観光客を対象としたサービスに注目し、新規事業を立ち上げる企業もあるほどです。
2020年には東京オリンピックが開催されるため、さらなる経済効果が期待されています。みずほフィナンシャルグループの試算によると、オリンピック・パラリンピックによる経済効果は直接効果・付随効果も含めると全体で約30兆円と予測されています。
インバウンドのデメリット・課題
大きな経済的メリットがある一方で、インバウンド観光にはデメリットや課題も存在します。
外国人観光客の対応をする際に、国籍、言語、宗教、趣味嗜好の違いなどがあり、それぞれに対応する必要があるのです。
特に、日本人は英語に対して苦手意識が強く、さらに島国のため、大陸続きの国々と比較して他国の文化や言語を理解することが難しいと言われています。このため、インバウンド観光の対策のために外国語が話せる人材や、外国人労働者の雇用を検討している会社も少なくありません。
また、過度にインバウンド対応することで、逆に日本人客を減らしてしまう可能性も危惧されています。インバウンド観光のメリットを最大限享受するためにも、訪日外国人のニーズを正しく把握して、既存の日本人観光客の満足度も保ちながらインバウンド観光の需要に対応していく必要があります。
インバウンド観光の対策
インバウンド観光のメリットを最大限に享受するために、適切な対策をすることが大切です。JNTO 訪日旅行データハンドブック 2018(日本と世界)を参考に、どんなことが求められているのか考察してみましょう。
外国人が訪日旅行中に役立った旅行情報源(2017年データ)
・インターネット(スマートフォン)(72.1%)
・空港を除く観光案内所(18.1%)
・インターネット(パソコン)(16.6%)
訪日外国人が在日中に欲しかった情報(2017年データ)
・無料Wi-fi(46.8%)
・交通手段(47.3%)
・飲食店(33.0%)
外国人が訪日旅行前に役立った旅行情報源
・個人のブログ(36.8%)
・SNS(24.6%)
・旅行会社ホームページ(19.4%)
外国語対応は必須
上記の情報を踏まえると、外国語対応は非常に重要です。多くの訪日外国人が、旅行前・旅行中にインターネット上で旅行情報を収集しています。日本人は他の国と比較して、外国語を話せる人が少ないため、外国語を社員に勉強させるか外国語が話せる人材を雇用しなければ、情報発信やコミュニケーションが困難になります。
まずはサービスのウェブ・SNSの外国語対応、次に対応するスタッフの外国語対応が重要です。スムーズなコミュニケーションができる体験は、サービスの満足度をさらに上げてくれるはずです。
現に百貨店などでは多言語対応のために外国人スタッフを採用し、バッジに対応している言語の国旗のマークをつけています。
決済の整備
次に支払い手段の整備です。インバウンドで一番多いのが中国からの旅行客です。彼らWeChat PayやAlipayといったスマホ決済か、銀聯というデビットカードを用いています。
国によっては、現金よりもカード決済が浸透しているところもあるため、不便を感じずにスムーズにお支払いしてもらうためにも決済システムの対応は非常に重要です。
日本の決済方法に合わせるのも体験の一つですが、様々な決済方法に対応しサービス拡充をしていきましょう。
Wi-Fi環境の整備
また、日本は他の国に比べて無料のWi-Fiサービスが少ないです。インバウンド向けのプリペイドSIM利用率は近年上昇傾向にはありますが、無料Wi-Fiは未だに訪日外国人にとって重要な通信接続手段です。Wi-Fiを設置し、利便性を高めることは集客に有効です。
インバウンドで人気の観光地でもある京都の「伏見稲荷大社」ですが、その付近に位置する稲荷繁栄会では2012年ごろからインバウンド観光対策をしています。無料Wi-Fiの不足問題に対して、商店街内にWi-Fiルータを設置しているのです。
外国語対応についても、インバウンド用の観光案内所の設置をしたり、商店街店舗に向けて接客力強化のための英会話教室の開催をしたりして、商店街で一体となってインバウンド受け入れ環境づくりに力を入れています。
日本でも、空港や鉄道各社、コンビニエンスストアやショッピングモールなどが無料のWi-Fi提供をしていますが、依然として不便を感じる方も多いようです。気持ちよく日本で過ごしてもらうためにも、Wi-Fiや外国語の対応を進めましょう。
まとめ
インバウンド観光は、訪日外国人の動向を知り日本でしか体験できないサービスや体験を提供することで経済的な効果が見込めるだけではなく国際交流も促進される非常に意義のある市場です。日本文化やこの国で提供されるサービスを正しく理解し楽しんでもらうためにも、インバウンド対策は非常に重要と言えるでしょう。
サービス自体を磨き込むことも大事ですが、まずは今あるサービスを理解してもらいやすくすること、コミュニケーションが取れるように改善して行くことが第一歩になります。