技能実習制度は廃止へ|新制度「育成就労」の中身と企業が取るべき対応を解説【2025年最新】

2024年、日本政府はついに「外国人技能実習制度の廃止」を決定しました。
それに代わり、2027年をめどに導入されるのが「育成就労制度」です。
これは、外国人労働者に関する日本の制度が大きな転換点を迎えることを意味しています。

本記事では、この新制度の具体的内容や、企業が今から準備しておくべき対応について、わかりやすく解説します。

技能実習制度の課題と廃止の背景

なぜ廃止?技能実習制度の限界と深刻な課題

技能実習制度は1993年に導入され、「国際貢献」や「技術移転」を目的としてスタートしました。
しかし、実際には人手不足の補填策として活用されるケースが大多数となり、本来の理念との乖離が問題視されてきました。

深刻な問題点

  • 長時間労働、賃金未払い、パワハラ、失踪といった労働問題が多発
  • 転職が原則不可という制度設計により、閉鎖的な労働環境が構造的に発生
  • 悪質なブローカーや仲介機関による高額な手数料や債務負担も深刻

これらの課題に対し、国内外から批判の声が上がり、国連や人権団体からも制度廃止を求める指摘がありました。

こうした背景から、日本政府は制度を抜本的に見直し、新たに「育成就労制度」への移行を決定しました。

育成就労制度とは?

2027年導入予定の新制度の中身

新制度「育成就労」は、これまでの技能実習制度とは異なり、外国人を正式な「労働者」として受け入れ、育成を前提とした制度です。

主な特徴

  • 目的の明確化:「労働力確保」と「育成」の両立
  • 雇用契約は企業と直接締結(管理団体経由ではない)
  • 転職(同業種内での職場変更)が一定条件で可能に
  • 能力評価制度の導入:日本語スキル・勤務実績・業務能力など
  • 家族帯同の可能性も将来的に検討中

技能実習制度との違い

何がどう変わる?具体的な比較

企業担当者にとって気になるのは、「今までと何が違うのか?」という点でしょう。

以下の比較表をご覧ください。

比較項目 技能実習制度 育成就労制度
制度の目的 技術移転(国際貢献) 労働力確保+育成
法的立場 実習生(非労働者) 労働者としての在留資格
転職の可否 原則不可 同一分野内で条件付き転籍可
雇用契約 管理団体が主導 企業が直接雇用
滞在年数 最長5年 同等~延長検討中
能力評価制度 無し 導入予定(語学・職能など)
仲介機関 民間の送出期間が乱立 政府認定機関へ集約予定

参考:出入国在留管理庁|育成就労制度

よくある質問

育成就労制度に関する実務担当者の疑問を解消

Q1. 育成就労制度はいつ始まるの?

2024年6月に改正入管法が成立し、遅くとも2027年6月までに施行されます。
制度開始後は一定期間、技能実習制度と並行運用される見込みで、2030年頃までに完全移行することが予定されています。

 

Q2. 技能実習制度や特定技能制度とはどこが違うの?

育成就労制度は「人手不足への対応と人材育成」が目的。
技能実習制度は、外国人技能実習生を受け入れ、「国際貢献」が主目的である一方、育成就労制度では入国時点での技能や専門性は求められず、未経験者から受け入れて企業で育てながら働いてもらう形です。
さらに、転職(職場変更)が条件付きで可能となるなど、労働者と企業の双方にとって柔軟性が高い仕組みになっています。

 

Q3. どの国からの人材を受け入れられるの?

育成就労制度では、悪質な送出機関を排除する観点から、原則として「二国間取決め(協力覚書: MOC)」のある国からの受け入れに限定されています。
これにより、不当な手数料の徴収などを防ぎ、適正なスキーム構築を目指します。

参考:出入国在留管理庁|育成就労制度・特定技能制度Q&A

企業が今から準備すべき4つのポイント

制度が変わる前に押さえるべき実務対応

育成就労制度の導入に備え、企業側でも基本的な準備が必要になります。
ここでは、実際に外国人を受け入れる企業の採用・現場担当者が、今から取り組んでおきたいポイントを簡潔にまとめます。

① 採用計画の見直し
・外国人を受け入れる職種・業務を社内で整理する
・長期雇用・人材育成を前提とした採用方針に見直す

② 教育・指導体制の準備
・入社時の研修内容や業務マニュアルの整備
・指導担当者の役割やサポート方法を明確にする

③ 外国人採用ルートの見直し
・信頼できる紹介会社や送出機関の情報収集
・新制度に対応した受け入れスキームの確認

④ 生活支援・定着フォローの確認
・住居や通勤など生活インフラの支援体制を確認
・定期面談などのフォロー体制を整える

制度が始まってから慌てないよう、今のうちから基本的な準備だけでも進めておくことが大切です。
特に採用ルートや受け入れ体制は、社内外との連携が必要になるため、早めの情報整理がおすすめです。

まとめ:制度の転換期は、採用の見直しチャンス

技能実習制度が廃止され、新たに育成就労制度が導入されることで、企業の外国人採用は大きく変わろうとしています。

これまでのように「短期的に人手を補う」目的で外国人を受け入れていた企業にとっては、考え方や体制の見直しが求められるタイミングです。
一方で、「人材を育てて、戦力として長く働いてもらう」ことを視野に入れている企業にとっては、制度が味方になるともいえるでしょう。

制度の違いや背景を正しく理解し、早めに対応しておくことで、必要なタイミングでスムーズな採用が可能になります。

これからの外国人採用は、単なる「労働力確保」ではなく、「育成」「評価」「定着」を含めた中長期の視点が重要です。

外国人材から「選ばれる企業」になるためにも、今のうちに情報を整理し、自社にとって必要な準備を一つずつ進めていきましょう。

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記事監修者
高梨 洋一
高梨 洋一
株式会社リーラコーエンジャパン CEO                       株式会社リクルートにて法人営業、海外事業、営業企画部部長など13年間経験。その間、ファーストリテイリングへ出向し人事・外国人採用に従事。シンガポールや上海で駐在し海外で人材紹介事業を運営。2015年より株式会社ネオキャリアに入社し、シンガポール法人の社長、海外事業全体の経営企画と経営管理を管掌する。その後は、日本企業の働き方の多様性と生産性向上を人の観点で支援すべく、2019年より株式会社ヨンイチを設立。2023年より主力事業である「Bridgers」の事業責任者となり、現在に至る。 現在は、主に海外経験と外国人雇用の知識とノウハウを活かして、多くの中小企業の外国人採用支援など行う。