雇用理由書とは、外国人が日本で就労するために在留資格を申請、または変更する際に作成する書類です。
必ずしも入国管理局へ提出する義務はありませんが、会社概要や登記簿謄本、申請人の履歴書や職務履歴書以外で雇用理由を補足説明できる重要資料です。
なぜ雇用理由書を用意した方がよいのか
冒頭でもご紹介したように、雇用理由書は外国人が日本で就労するために在留資格を申請、または変更する際に作成する書類です。
在留資格の申請、または変更の際は、入国管理局にて「日本国にとって有益であり、かつ害を及ぼさない人間である」と認められる必要があります。
その審査のために必要と定められている申請書類と添付書類を提出すれば、入局管理局にて受け取ってもらえ、審査結果を待つだけとなります。
しかし数週間待ったものの不許可となったり、追加資料を求められて審査期間が伸びてしまったりということは珍しくありません。
なぜなら、定められている申請書類と添付書類だけで入局審査官に認めてもらえるとは限らないからです。
そこで雇用理由書をあらかじめ用意して申請書類と添付書類とあわせて提出すれば、提出しない場合に比べて短期間で審査してもらうことができます。
雇用理由書とは冒頭でもご紹介したように、雇用理由を補足説明できる重要資料です。
雇用理由書で「会社が全面的に当該の外国人の在留資格の申請、または変更を支援している」ということを示すことは、スムーズな審査につながります。
以下では、具体的にどのような内容を記載すればよいか、例文およびチェックポイントについて、ご紹介します。
雇用理由書の例文
はじめに、雇用理由書の例文をご覧ください。北海道でホテル事業を展開する企業の事例を取り上げます。
2018年**月**日
○○入国管理局長 殿
北海道札幌市中央区1-1-1
株式会社○○
代表取締役 ○○ △△
雇用理由書
1.申請人の基礎情報
氏 名:○○
国 籍:中国
生年月日:19**年**月**日
2.所属機関の基礎情報
所属機関:株式会社○○
設 立:1995年8月
資 本 金:10,000,000 円
売 上:3,000,000,000 円
事業内容:ホテル事業
概要
弊社は、1995年8月に設立し、北海道を中心に20棟のホテル・旅館を運営しております。訪日外国人客の増加もあり、売上、利益ともに順調に推移しており、今後、訪日外国人客に人気のエリアへの展開も検討しております。
主要取引先企業は、株式会社△・□株式会社などが挙げられます。
3.申請人の配属先
総合職として入社いただき、以下のホテルへ配属いたします。
<ホテル△△> 北海道札幌市中央区2-2-2
北海道最大の歓楽街「すすきの」に位置しながらも喧騒を離れて静かにお過ごしいただけるホテルです。
すすきのまで徒歩5分という立地であることから、訪日外国人客の方の利用が多いことが特徴です。
また、近隣の温泉施設と提携しているため、天然温泉を楽しむこともできます。
*客室数:50室
*中国語圏からの年間宿泊者数:12,329名
4.申請人の担当する業務
担当する業務は外国語を用いたフロント業務と、訪日外国人客への近隣観光施設の案内業務などです。
配属先のホテルの最寄りには、函館空港、新千歳空港があり、いずれもアジア圏、中国語圏の国際便が多数存在します。
訪日外国人客、とりわけ中国語圏からのお客様が今後も増加することを考えると、配属先のホテルに中国語対応ができる従業員が1名しかいない今、語学が堪能な従業員の雇用は、喫緊の課題であります。
以上の状況を踏まえて、申請人にはフロントにて、外国人顧客の応対に就いてもらいたいと思います。
具体的な業務では、ホテルの予約等を管理するWebサイト上での問合せメールのやり取りや、来客時におけるチェックインやチェックアウトの応対、併設のレストランとの連携・報告、顧客への観光地の紹介、などです。
5.今回の採用(申請を必要とする)理由
申請人は、中国の□□大学にて、日本語学科を卒業しております。
卒業後は、母国にて、日本人観光客が多く来店する○○百貨店での勤務経験があり、中国語、日本語での通訳業務に5年間従事しておりました。
また、日本語能力検定(JLPT)ではN1に合格するほど語学堪能です。
選考過程の面接においても、高いコミュニケーション能力、柔軟性が垣間見れ、臨機応変さが求められるフロント業務での活躍に期待ができます。
6.さいごに
官民を挙げて、さまざまなインバウンド誘致手段を講じ、奏功していることは今の日本を見ても明らかです。
2020年に東京オリンピックが開催され、ますます海外から注目を浴びる日本。特に北海道は観光資源に恵まれており、今後も訪日外国人が増加することが予想されるでしょう。
現状、インバウンドの対応が遅れている弊社においては、対策が急務であると同時に、今後のインバウンド需要に備えなければなりません。
上記の事情をご賢察の上、「技術・人文知識・国際業務」ビザの認定をご許可頂きたくお願い申し上げます。
以上
[監修] 行政書士法人jinjer
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入国管理局は、雇用理由書のココを見ている
雇用理由書を作成する上でのポイントは、以下の4つです。
①会社規模、②申請人の経歴、③業務内容、④補足事項
企業ごとに記載に重点を置くポイントは異なってきます。
企業規模がそれほど大きくないのであれば経営の安定性を訴える必要がありますし、業務内容や申請人の経歴について疑問を持たれる懸念があれば、それらを証明するものを記載します。
①会社規模(事業の安定性)
②申請人の経歴(学歴や職歴)
②業務内容と申請対象者の経歴との合致性(申請内容との妥当性、業務量に照らして採用人数は適正か)
④補足事項(会社が申請人をどうサポートできるか)
このように四段階に分けて記載することで、申請人をなぜ採用するのかということが伝わりやすくなります。
入国管理局は何人もの雇用理由書を読み込んでいるわけですから、A4で一枚~二枚程度の分量が目安です。
ただし、難しい申請であれば、ボリュームが増えてでも、詳しく説明したほうがいいでしょう。
それでは、雇用理由書に記載する各パートについて詳しく見ていきましょう。
事業の安定性
在留資格でも「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「経営・管理」で申請をする場合は、企業の区分は四種類のカテゴリーに分けられています。
カテゴリー1は上場企業、カテゴリー2の目安は社員数が約200人以上の団体・個人、カテゴリー3は給与所得の源泉徴収の法定調書合計表が提出された団体・個人、カテゴリー4は上記に該当しない団体・個人が当てはまります。
事業概要はもちろんですが、カテゴリー2-4の企業の場合は事業の将来性や安定性について、より詳しく書かなければなりません。
また章末に海外に関する事業の計画を盛り込めるのであれば、より審査での印象が良くなるでしょう。
申請者の学歴や職歴
日本人を採用するのでなく、なぜ「その申請人を採用しなければいけないのか」という理由を明確に記載するのがポイントです。
申請人が保持する資格や前職での実績など、自社にどれだけ貢献できる人材であるかアピールしましょう。
申請人に職歴がない場合は、日本語能力や英語能力を記載することで良い印象を持たれるようにします。
業務内容と申請人の経歴の合致性
記載する業務内容と申請人の経歴が合致しないと見なされた場合、不許可となる可能性があります。
申請人が担う業務内容をできるだけ詳しく記載し、経歴や保持するスキルと業務内容の合致性をアピールしましょう。
さらには、申請する在留資格の種類との整合性も取れている必要がありますので注意が必要です。
会社が申請人をどうサポートできるか
最後に見落としがちなポイントとして、入社後も企業が申請人を安定的にサポートする旨を記載することが重要です。
住居探しや相談窓口の設立、住民届けの手続きサポートなど、入国後も日本国内で申請者をサポートできる体制があるという点をアピールすることが大切です。
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在留資格の取得に必要な書類
雇用理由書は、提出が必須ではないものの、スムーズな審査のためには用意したほうがいい書類です。
一方、雇用者が在留資格を得るためには必須書類が多くあります。
ここでは、在留資格の中でも申請者の多い「技術・人文知識・国際業務」を例に必要な書類をご紹介します。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、前述のとおり、企業の規模に合わせて4つのカテゴリーに分類されます。
上場企業や公共団体、独立行政法人などが含まれるカテゴリー1では、以下のものが必要です。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 申請者の写真」「3.簡易書留用切手(392円分)を貼付した返信用封筒
- 四季報の写しや設立の許可を受けたことを証明する書類の写しなど、カテゴリー1に該当することを証明するもの
- 専門士、高度専門士であることを証明する文書(称号を付与された者が対象)
「前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人」であるカテゴリー2、カテゴリー3では、受付印のある法定調書合計表の写しがさらに必要です。
「給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額」が1,500万円未満であればカテゴリー3に該当し、さらに以下のものを提出します。
- 労働条件を明示した雇用契約書など
- 大学等の卒業証明書、在職証明書、情報処理技術に関する資格の証書、履歴書など申請者の経歴を証明する書類
- 登記事項証明書
- 沿革や役員、事業内容などが示された、パンフレットなどの資料
- 直近の年度の決算書の写し」
いずれにも該当しないカテゴリー4は、以下を提出できない理由を説明できる資料が必要です。
- 事業計画書(新規事業の場合)
- 『前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表』
このように、必要書類は企業によって細かく設定されており、在留資格の種類によっても変わります。詳しく知りたい場合は、法務省のサイトで確認できます。
参考:法務省「日本での活動内容に応じた資料【在留資格認定証明書交付申請】」
【5分資料】就労ビザ(在留資格)の基礎資料
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雇用理由書+@で必要な書類とは?
必要な書類がすべて揃いましたら、入国管理局へ提出します。
▼必要書類【完全マニュアル】はこちら
雇用理由書に加えて、任意で社内の写真やBJTビジネス日本語能力やJLPT 日本語能力試験のテスト結果など何かしら申請人の能力を証明できる書類を一緒に添付し信用度を高くするのがおすすめです。
書類準備には膨大な時間と労力がかかりますが、準備した内容は許可・不許可の結果に直結します。
ぜひこの記事を参考に、審査に通りやすい雇用理由書を作成してみてください。
行政書士法人jinjerは、ビザ申請代行から申請者の日本での生活を支援まで行います。同時に日本での生活に馴染めるように指導と法令順守を監督いたします。