特定技能と技能実習の違いとは?5項目を徹底比較!

特定技能と技能実習生の違いとは?

現在日本では多くの外国人が活躍しています。

その中でも2025年6月時点で、特定技能は336,196人、技能実習生は449,432人が在留しています。

特に特定技能は2019年に制度が施行されてから急激に増加し、日本の労働力不足に大きく貢献しているといっていいでしょう。

一方で技能実習生は今後、技能実習制度の適正な実施及び保護の観点から

育成就労」への制度変更が2027年に実施される見込みです。

参考:政令第340号

そのような状況の中で、「技能実習生と特定技能の違いはなんですか?」というお問い合わせも多くいただきます。

特定技能と技能実習生は外国人を受け入れることができるという点では共通しているものの、制度の背景や内容には異なる点があります。

本記事では特定技能と技能実習生の違いを比較したうえで、今後の外国人の受け入れについて一緒に考えていきましょう。

 

1.制度の目的

特定技能と技能実習生の違いを理解する上でまず押さえておきたいポイントが、制度の目的です。

両制度とも目的に応じた制度設計がなされており、受け入れを検討する上では押さえておく必要があるでしょう。

・特定技能 = 人手不足の分野において、即戦力となる外国人を受け入れるため 

・技能実習生 = 日本での実習を経て母国へ貢献する活動(技能移転)を通した国際貢献

特定技能では受け入れ会社に直接雇用されることになるため、日本人と同待遇の諸条件で外国人を受け入れる必要があります。

このように、特定技能は外国人労働者の受け入れを主な目的として整備された制度である一方、技能実習制度は国際貢献が目的とした人材育成制度です。

そのため、技能実習生を「労働力の確保」を主目的として受け入れることは適切ではありません。

労働力の確保を目的として外国人材を採用する場合は、特定技能での採用を検討しましょう。

2.受け入れられる業種

技能実習で受け入れられる職種

実習生作業一覧

現在(令和7年3月時点)91職種168作業で技能実習を受け入れることができます。

参考:厚生労働省 技能実習制度移行対象職種・作業一覧

 

特定技能で受け入れられる職種

現在、特定技能1号で就労可能な分野は以下の 16分野 です。2024年3月の閣議決定により新たに4分野が追加されました。

・介護

・ビルクリーニング

・工業製品製造業(旧・素形材/産業機械/電気電子情報関連製造業)

・建設

・造船・舶用工業

・自動車整備

・航空

・宿泊

・農業

・漁業

・飲食料品製造業

・外食業

・自動車運送業(2024年追加)

・鉄道(2024年追加)

・林業(2024年追加)

・木材産業(2024年追加)

参考:法務省 特定技能1号の各分野の仕事内容

 

技能実習生と特定技能では、厳密には受け入れ可能な職種・分野が異なります。

例えば、縫製分野では技能実習では受け入れが認められていますが、現時点では特定技能での受け入れはできません。

一方で、両制度で受け入れが可能な分野であれば、技能実習生2号を終了した外国人は、同一分野の特定技能へ移行することが可能です。

参考:労働基準監督署

3.受入方法と人数

技能実習生と特定技能の受け入れ方法の違いは、自社で主体的に採用から受け入れを実施できるかどうかです。

・技能実習生

採用活動:「監理団体」を通じて、海外の「送り出し機関」から推薦を受ける

受け入れ:監理団体による管理・監督および指導

人数:事業所の規模により制限あり

・特定技能

採用活動:自社で募集することが可能(人材紹介会社の利用可能)

受入れ:企業で雇用し、登録支援機関または自社で義務的支援を実施

人数:制限なし(ただし介護・建築分野では常勤社員の数を超えてはならない)

 

技能実習生の場合は、監理団体による管理・監督が必要となり、企業単独で完結することはできません。

一方、特定技能では、基本的に企業が自社で採用から受け入れまで対応することが可能です。ただし、過去2年以内に外国人材の受け入れ実績がない企業は、特定技能外国人を受け入れる際に、登録支援機関による支援が必要になります。

4.外国人に求められるスキルや経験

技能実習生は技能移転を目的としているため、基本的に受け入れる外国人に制限はありません。そのため、入国のために必要な試験もありません。ただ前述のとおり、監理団体と送り出し機関を通じて海外から採用をする必要があります。

一方で特定技能は「即戦力となる外国人」を受け入れることを目的としているため、即戦力の指標として、試験に合格している必要があります。

 

・日本語:JLPT N4 またはJFT Basic

・技能:分野別技能試験

 

また、技能実習生2号以上を修了した外国人は、同じ分野の特定技能1号に移行することが可能です。

5.在留期間と転職

技能実習生は、「実習」を目的として日本に在留しているため、1号、2号、3号を合わせて最長5年間で実習期間が満了します。

また、実習目的の在留であることから、原則として他社への転職や家族の帯同は認められていません。

一方、特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、特定技能2号を取得すれば在留期間は更新制となり、実質的に上限なく働き続けることが可能です。

さらに、特定技能は「就労」を目的とした在留資格のため、日本人と同様に転職が可能です。ただし、分野をまたいで転職する場合は、転職先分野の技能試験に合格している必要があります。

加えて、特定技能2号を取得した場合には、家族帯同が認められるケースもあります。

まとめ 

本記事では、特定技能と技能実習生の制度の違いについて解説しました。

前述のとおり、最も重要なポイントは、技能実習生は「実習」、特定技能は「労働」を目的とした在留資格であるという点です。

さらに、技能実習制度は2027年から新制度「育成就労」に移行予定です。一方、特定技能は対象分野の拡大や特定技能2号の増加方針など、国として受け入れを強化する動きが続いており、企業にとっても活用しやすい制度へと進化しています。

これら両制度の特徴を理解することで、人手不足解消の手段として、また将来の管理職候補となる外国人材の確保に向けたヒントになるでしょう。

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記事監修者
高梨 洋一
高梨 洋一
株式会社リーラコーエンジャパン CEO                       株式会社リクルートにて法人営業、海外事業、営業企画部部長など13年間経験。その間、ファーストリテイリングへ出向し人事・外国人採用に従事。シンガポールや上海で駐在し海外で人材紹介事業を運営。2015年より株式会社ネオキャリアに入社し、シンガポール法人の社長、海外事業全体の経営企画と経営管理を管掌する。その後は、日本企業の働き方の多様性と生産性向上を人の観点で支援すべく、2019年より株式会社ヨンイチを設立。2023年より主力事業である「Bridgers」の事業責任者となり、現在に至る。 現在は、主に海外経験と外国人雇用の知識とノウハウを活かして、多くの中小企業の外国人採用支援など行う。