中小企業の人手不足が深刻化。原因と具体的な対策とは?

中小企業の人手不足が深刻化しています。

また少子高齢化の影響で労働生産人口も減少しており、中小企業だけではなく大企業も含め、熾烈な人材獲得争いが起こっています。

今回の記事では、なぜ中小企業で人手不足が起こっているのか、また人手不足への具体的な対応についてご紹介していきます。

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企業の51%が人手不足を認識

2025年4月の帝国データバンクの調査によると正社員が不足している企業は51.4%にものぼります。正社員の人手不足は、半数を超える企業が認識しており、調査開始の2006年5月以降、最高水準での推移が続いているとのことです。

中小企業庁のデータによると2021年6月時点で日本企業の99.7%が中小企業。このため、人手不足の問題は多くの中小企業にとって他人事ではないと言えます。

中小企業の人手不足倒産も問題に

東京商工リサーチによると、2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多となっています。2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録しました。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増しています。

人手不足は、人件費増加などコスト負担の上昇を引き起こし、企業業績への悪影響も懸念されます。有効求人倍率も依然高い水準を維持しており、人員を確保しにくい現状があります。

近年では、人手不足業種と言われていた「飲食店」「旅館・ホテル」は人手不足感が緩和傾向にある一方で、現在はITエンジニア不足が目立つ「情報サービス」が70.2%でトップとなり、技術者不足や就業者の高齢化が指摘されている「メンテナンス・警備・検査」(69.7%)も高水準で続いており、全体的な人手不足は深刻です。

参照:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)

中小企業の人手不足の原因

中小企業の人手不足の主な原因には、人口減少・生産年齢人口の減少、大企業へ人材が一極集中しそもそも求人に応募がない、離職率が高いなどがあります。

人口減少・生産年齢人口の減少

総務省統計局の調査によれば、2025年10月時点での日本の人口は1億2321万人、下記のグラフを見ると、ここ10年で減少の一途を辿っています。

参照:総務省統計局「人口推計(2025年(令和7年)5月確定値、2025年(令和7年)10月概算値) (2025年10月20日公表)

人口の減少は、生産年齢人口(15~64歳)の減少にも直結します。日本の生産年齢人口割合は全体に対して50%台後半に推移しており、他の先進国に比べて低くなっています。労働政策研究・研修機構によると、日本の2022年時点の数値は主要7カ国(G7)の中で最も低く、米国(64.9%)、英国(63.4%)、カナダ(65.4%)などと比べても大きく下回っています。

参照:日本経済新聞「生産年齢人口とは 日本は5割台後半、G7最低

前述したように、生産年齢人口が減っているにも関わらず、有効求人倍率は高い基準を推移しているため、労働力の確保に苦戦している状況です。

大企業への一極化

少子高齢化や働き方に対する価値観の変化など様々な要因はありますが、そもそも「この企業で働きたい」という人が少なくなれば、その企業の体力は低下していきます。

中小企業の人手不足の原因の一つに、待遇に対する不満が挙げられます。中小企業は一般的に、大企業に比べて賃金水準が低い傾向にあります。福利厚生や労働時間などの面でも、大企業に比べて見劣りするケースが多く、求職者とのニーズのミスマッチが生じています。

このような理由で、そもそも応募が集まらず採用がうまくいかない、せっかく人材を確保したとしても離職が多く定着しないなどの問題を抱えているケースがあります。労働人口の減少以前に、従業員が働く環境に満足しているかどうかを考える必要があるかもしれません。

情報通信業界によく見られる原因

ここからは、特に人手不足が深刻だと言われている業界別に、よく見られる原因を見ていきます。

情報通信業では、企業のDX化が進む中、情報サービス系の専門職に対する需要が高まっています。しかし、必要なスキルを持つ人材が不足しており、人手不足の傾向が顕著です。特にIT業界では人材不足が深刻化しており、専門的なスキルを習得するために時間を要することも、その一因とされています。

運輸業・郵便業によく見られる原因

近年では、オンラインショッピングの定着により、運輸業や郵便業の需要が高まっています。需要の伸びに対してドライバーが足りないなど、人手不足、労働力不足が目立つようになりました。時間内に効率よく配送を行わなければならないといった労働環境の厳しさと、待遇・供給とのギャップも原因の一つだと考えられます。

加えて、2024年4月以降は運送業界に時間外労働の上限規制が適用されました。長時間労働に頼る働き方が難しくなり、人手不足を招いています。

建設業によく見られる原因

建設業界も、人手不足が深刻化している業界の一つです。これは、プロジェクトによって雇用が不安定であること、長時間労働や肉体労働が多いことなどが理由として考えられます。また、働き手の高齢化に伴い、若手の人手不足も考えられます。今後はインフラの老朽化に伴って需要が増えると予想されており、さらなる人手不足が懸念されています。

さらに、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。長時間労働での対応が難しくなるため、人手不足にも影響を与えています。

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中小企業の人手不足への対策

これまで見てきたように、中小企業を筆頭に、日本企業全体として人手不足が深刻化しています。有効求人倍率も高く推移しているため、しっかりとした対策を取らなければ、人材を確保できないばかりか、企業から流出してしまう可能性もあります。ここでは、人手不足の解決策を見ていきます。

まずは職場環境のチェックを

今いる従業員の方の職場環境をチェックし、少しずつでも改善していきましょう。

労働時間は過剰ではないか、人間関係やキャリアに関する悩みはないか、待遇に不満はないかなど、定期的に面談を行ってはいかがでしょう。

あるIT企業では、従業員が働きやすい環境を作るための専門の部署があり、仕事の一つとして職場環境を良くしようという取り組みを行なっています。

生産性向上のための努力を

次に、仕事自体の生産性向上です。主に、長時間労働などを改善するため、無駄な仕事をなくすために、いま行っている業務が本当に最適かどうかを洗い出すのです。

あるIT企業では、コンサルティング会社が入り、生産性向上プロジェクトを実施。従業員が行っている作業を15分単位で記録し、1ヶ月かけて部署内で無駄を洗い出しました。その結果、業務工程が大きく改善されたとの事例があります。

アウトソーシングの活用

人員を増やすことや、派遣社員を受け入れることに抵抗がある場合は、業務自体を一旦アウトソーシングする方法も有効です。最初は外注先への指示など手間がかかるかもしれませんが、その分時間を削減でき、現場の負担は軽減されます。

業務効率化サービスの導入

ロボットやAIの導入などの大々的な設備投資はできなくとも、社内コミュニケーションや業務を円滑化するためのサービスの導入も有効です。

例えば社内SNSの整備は社員同士のコミュニケーションを促進しますし、会計ソフトと連携したレジを使えば会計などのバックオフィス業務も大幅に削減されます。このように、新しいシステムや技術を取り入れることが、長い目で見て人手不足の解消に繋がるかもしれません。

給与体系の見直し

給与体系を見直すことで、労働意欲を増し、生産性の向上や離職率の低下につなげることができます。単純に給料をアップすることや新たにインセンティブを設けるとなると1人あたりの人件費は増すかもしれませんが、離職や採用にかかる費用を削減し、1人あたりの生産性が上がれば投資以上のリターンを得られる可能性が高まります。

その中でもポイントとなるのが、働き方改革の中でも重要なポイントとされている「同一労働同一賃金」です。同じ労働をする従業員には等しい賃金を支払うべきとする考え方で、非正規雇用の従業員を正社員に上げるなどの対策で仕事への納得感を増し、労働環境の改善につなげることができます。

休暇、福利厚生の見直し

十分に休めない職場環境は離職率を上げる原因になり、1人ひとりの生産性を下げ、求職者から魅力的な会社として映りません。完全週休2日制を導入する、有給休暇を取得しやすい環境を整える、自社ならではのユニークな休暇制度を作るなどの対策で、人手不足が解消される可能性が高まります。

同じように、福利厚生の内容の見直しもおすすめです。新しい福利厚生の制度を作るだけでなく、今ある福利厚生は本当に従業員に喜ばれているのかを精査することも重要です。

外国人労働者の雇用

日本人に限らず、外国人労働者まで対象を拡げて採用活動を行う方法もあります。ここ10年ほどで、外国人労働者の数が増加していることをご存知でしょうか。2024年10月時点で日本国内で外国人労働者数は2,302,587人、外国人労働者を雇用している事業所は事業所が342,087所にものぼります。

外国人労働者を雇用するメリットは、単なる人材確保にとどまりません。

参照:厚生労働省が公表した「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)

海外から優秀な人材を採用することは、企業にとって大きなプラスになるでしょう。他の社員への刺激となり、会社の成長を期待する声もあがっています。

海外進出を計画・実施している企業の場合は、現地との関わりをサポートしてくれる橋渡し役としての役割も期待できるでしょう。課題は、日本語を母国語としない方々を受け入れるための社内体制の整備などです。この課題をクリアすれば、グローバル企業としての将来の躍進も期待できるでしょう。

まとめ

これまで見てきたように、中小企業の人手不足は多くの企業が認識しており、今後も継続していくと考えられます。このため、そもそもなぜ人手不足になるのかといった原因を見つめ直し、対策を取る必要があります。

いずれの方法も、一朝一夕で解決できるものではありませんが、時間をかけて根気強く対応しておくことが重要です。人材確保に関しては、プロの人材紹介会社に頼るのも一つの方法です。今回の記事が、中小企業の人手不足解消のご参考になれば幸いです。

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記事監修者
高梨 洋一
高梨 洋一
株式会社リーラコーエンジャパン CEO                       株式会社リクルートにて法人営業、海外事業、営業企画部部長など13年間経験。その間、ファーストリテイリングへ出向し人事・外国人採用に従事。シンガポールや上海で駐在し海外で人材紹介事業を運営。2015年より株式会社ネオキャリアに入社し、シンガポール法人の社長、海外事業全体の経営企画と経営管理を管掌する。その後は、日本企業の働き方の多様性と生産性向上を人の観点で支援すべく、2019年より株式会社ヨンイチを設立。2023年より主力事業である「Bridgers」の事業責任者となり、現在に至る。 現在は、主に海外経験と外国人雇用の知識とノウハウを活かして、多くの中小企業の外国人採用支援など行う。